3月末に開幕したスーパーGT2012シリーズは7ヶ月を経て、いよいよファイナルラウンドを迎えた。舞台はツインリンクもてぎ。23号車「MOTUL AUTECH GT-R」が昨年ここで繰り広げた、タイトルを賭けた史上に残る名勝負はまだ、ファンの記憶に新しい。今回はタイトルの権利を既に失った中での戦いとなったが、本山哲はじめミハエル・クルムやチームスタッフ全員の優勝へのラストチャンスに賭ける意気込みは、昨年の最終戦に勝るとも劣らないものだった。
【予選】 10月27日(土)天候:晴れ 路面:ドライ 気温:20℃ 路面温度:30℃(予選開始時)
23号車が今季ここまで結果を出せなかった原因は、アクシデントによるものがほとんど。したがって、シーズンを通して見せてきた23号車の速さは最終戦でも変わりはなかった。
秋晴れの中、午前中に行われた2時間に及ぶ公式練習では、23号車は41周を走り込み順調にセットアップ作業を進める。そしてセッション序盤の段階で本山がマークしたベストタイム1’42.479は最終的に5位と、今回も好スタートとなった。
午後2時からの公式予選は、ノックアウト方式で行われた。上位11台がQ2進出となるQ1では、23号車はエースの本山がアタックに挑む。
15分間のセッションの中、開始から7分過ぎに1台がコースインしたのを皮切りに全マシンがアタック開始。本山もここでコースイン。1周目からほとんどのマシンが果敢にアタックしていく中、本山はまず1周目を1’47.201とウォームアップにあて、2周目に本アタック。この1’42.008が6番手タイムとなり、23号車はなんなくQ2に駒を進めた。
Q2はクルムが、10分間のセッションで3周のアタック。3周目にマークした1’42.374が6位となり、23号車は最終予選のQ3に進出。Q3のアタッカーは再び本山に委ねられた。
Q1から15台中14台がコースレコードをマークするという最終戦に相応しい激しいタイムアタック合戦は、Q3でさらに激しさを増すこととなった。10分間のセッションの中、4分を経過したあたりで本山はコースイン。Q1と同様の手順でまず1周目を1’45.608で入ると、2周目にセクター1で最速タイムをたたき出す渾身のアタックを敢行。
今季初のポール獲得の期待を高める。23号車はトータルで1’41.735という素晴らしいタイムをマークするも3位。それでも昨年の5番グリッドを上まわる3番グリッドは、ファンにとって今季初優勝の可能性を色濃くするに充分な結果だといえるだろう。
振り返れば第6戦を除きすべてのレースをセカンドローより前からスタートしている23号車にとって、ここまでは普段通りの速さを見せたに過ぎない。優勝まで辿りつけるかどうかはここから先、明日の250kmのレースでチーム全員がベストをつくせるかどうかにかかっている。
昨年この舞台でここ一番の力を披露しているだけに、ファンは皆大きな期待を寄せているに違いない。
●本山 哲のコメント
「今日は午前中からマシンの調子が良く、アジャストを重ねる毎に着実にパフォーマンスは上がっていきました。また予選でのアタックもうまくいったと思います。レースは3位からのスタートになりますが、路面温度もこの時期は時間帯や天候次第で大きく変化するし、雨の予報もあるので、そう簡単なレースにはならないと思います。
ですが、やはり今年はまだ優勝していないので、最後のチャンスを何としてもものにしたいという気持ちを非常に強く持っています。これは自分だけではなく、一年間一緒に戦ってきたチーム全員が同じ気持ち。どんな展開になったとしてもチーム一丸となって優勝に向かい、精一杯の戦いで今季を終えたいと思います。」
【決勝】 10月28日(日)天候:雨 路面:ウェット 気温:14℃ 路面温度:18℃(決勝開始時)
スーパーGT2012シーズンはいよいよファイナルデーを迎え、今季最終戦の決勝が、ツインリンクもてぎで行われた。
昨年の最終戦であと一歩というところまで迫りながらも逃がしたタイトルを奪還すべく挑んだ今シーズンだったが、開幕から安定した速さを見るも結果に繋げられず23号車「MOTUL AUTECH GT-R」は望みを失って今季最終戦を迎えることとなった。
それだけにチームは最後に何としても優勝を勝ち取ろうと一丸となり、前日の予選では3番グリッドという好位置を獲得。午前中のフリー走行でも5位のタイムをマークし順調に最終調整を終えると、決戦開始の時を待った。
フリー走行時にはまだ降り出していなかったが、予報通りその後のサーキットサファリあたりから雨がサーキットを濡らし始めた。以降雨脚は弱いものの止むことなく、午後2時スタートの決勝は、ウェットコンディションの下で行われることとなった。
23号車のスタートドライバーは今回、ミハエル・クルム。レインコンディションでの安全確認のため、2周のセーフティカーランを経てから3周目に事実上レースはスタート。23号車はここでまずは3位をキープすると、早々と2位へとポジションアップを果たす。ところがその後はトップを追撃するまでのペースアップを図れず、
徐々にタイム差は広がっていった。さらに10周目、ペースで勝る後続マシンにオーバーテイクされ16周目には5位と、優勝へは逆に遠ざかっていく展開となってしまう。マシンのバランスが路面状況に合っていないと判断したチームはここで、予定より早めのピットインを敢行。20周目にピットに入るとタイヤ交換をすませ、本山哲をコースに送った。
ここから本山がプッシュし、後にピットインする先行マシンの前に出る作戦であったが、本山もまた思うようにペースを上げることができなかった。ウェットコンディションとなったことで、マシンバランスはドライの時ほど万全ではなくなっていた。
さらに23号車の後にピットインした1台がタイヤ無交換作戦に出るとその後も続々と上位マシンが同じ作戦で続き、すべてのピットインが終わった36周目、23号車は6位にポジションを落としてしまうこととなる。
ここから本山はマシンのパフォーマンスに苦しみながらも、エースらしいミスのない走りで粘り強く順位をキープ。終盤は7位のマシンの猛追を喰らいながらも最後まで凌ぎ切り、6位のままでチェッカー。
優勝を果たすことはできなかったが、最後も着実に5ポイントを獲得した。
最終的に23号車は、ランキング8位で2012シーズンを終えることとなった。速さがなくて結果が出なかったのではなく、速さはあったのに結果が出なかったことの無念は計り知れない。
そしてタイトル奪還は来期へと持ち越された。長いオフシーズンの間その希望を繋ぐためにも、11月に富士スピードウェイで行われる特別戦、JAFグランプリでの活躍は必須だ。
●本山 哲のコメント
「昨日から今朝にかけてもマシンの状態は良かったのですが、レースではウェットコンディションになったことでバランスが変化し、ウェットの路面状況に対し選んだタイヤが合っていなかったようでした。
今シーズンはここまでも同じような展開のレースが多かったのですが、最後もその流れを断ち切れず、一年間ずっと応援し続けてくれたファンの皆さんに一度も優勝をお見せすることができなくて残念です。
もちろん来年こそは必ずタイトルを奪還して見せますので、ご期待下さい。
今年もシリーズ最後まで応援してくれたファンの皆さん、チーム、関係者の皆様方に心よりお礼申し上げます。
この後は、3週間後にJAFグランプリが開催されます。引き続きご声援をよろしくお願いします!」