スーパーGT2012シリーズは、セミファイナルとなる第7戦を九州のオートポリス(大分県)で迎えた。
この大会では、従来のポイント×2kgのウェイトハンデが×1kgに軽減。タイトル争いの天王山となる一戦として注目されている。昨年は序盤戦で不調だった23号車「MOTUL AUTECH GT-R」がここから2連勝を果たし、タイトル寸前まで上り詰めた。
また、ここオートポリスは本山 哲が過去4勝を挙げており、現行マシンのGT-Rでは2008年と2010年で2勝を記録。マイスターの名を欲しいままにしているサーキットである。その記憶を鮮烈に残すファンにとっては、タイトルが難しくなった今シーズンでもやはり、最も優勝の期待を掛ける一戦であることに違いはなかった。
【予 選】
9月29日(土)天候:雨 路面:ウェット 気温:15℃ 路面温度:18℃(予選開始時)
沖縄地方に接近している台風17号の影響からこの日、九州中南部には強い雨が降り注いだ。オートポリスも朝9時の公式練習開始前から大粒の雨に見舞われ、2時間にわたるセッションは終始ヘビーウェットコンディション。この日だけでなく翌日の決勝も雨が予想されるため、ここでの走り込みやデータ収集は今回のポイントとなる可能性もある。
23号車はここで本山を中心に計40周を走行し、終盤雨脚が弱まっていく中マークしたベストタイムは5位。今回も出だしから安定した速さを見せた。
ピットウォークが行われる正午前後には一時弱くなった雨脚だが、その後再び強くなり午後2時からの公式予選は公式練習同様のヘビーウェットコンディションの下で開始された。
ノックアウト予選のQ1では23号車は本山が出走。開始後ほどなくして一台のマシンがスピンしコース上にストップしてしまったため赤旗中断となったが、5分後に再開されるとすぐに再コースインする。そして水の量が微妙に変化しラップタイムに影響を与えるという状況の中、15分間を連続でアタック。
最初のラップで3位となる1’54.541をマークすると、翌周さらにタイムを1’54.084まで伸ばし2位に浮上する。その後はベストタイムの更新はならなかったが、23号車は4位でまずはQ2進出を決めた。
再び赤旗中断があったQ2では、その前後でミハエル・クルムがタイミングよくアタックを行い、1’48.869という好タイムをマーク。堂々の1位通過で、Q3に挑む本山に再びバトンは渡された。
Q1から比べるとかなり雨脚が弱まってきた中、本山はポール獲得に向けQ3が開始されると先頭を切ってコースイン。1周目から果敢にアタックに挑み1’48.269をマークしトップに立つと、2周目もさらに1’46.908までタイムを削りトップを守る。
そして3周目のアタックでも1’46.535と更なるベストタイム更新に成功するが、わずか千分の1秒差で23号車を上回ったマシンが現れる。この結果23号車は2位で予選を終了し、決勝を今季2度目のフロントローから挑むこととなった。
●本山 哲のコメント
「難しい予選でしたが、路面コンディションに対するタイヤチョイスも、二人のドライバーのアタックもすべてうまくいったと思います。ほんのわずかな差でポールを逃してしまうことになり非常に残念ですが、あくまで重要なのは決勝でトップチェッカーを受けること。
もともと中高速コーナーが多いオートポリスは自分たちのマシンと相性がいいのですが、今日の予選でウェットコンディションでも安定した速さを発揮できることが分かったので、コンディションがどっちになっても充分優勝に向けた走りができると思います。
残り2戦となったので、ここまで応援してくれた皆さんの期待に今回必ず応えたいと思います。最後まで応援よろしくお願いします!」
【決 勝】
9月30日(日)天候:晴れ 路面: 気温:16℃ 路面温度:18℃(決勝開始時)
前日の予選で千分の1秒というわずかな差でポールを逃した23号車「MOTUL AUTECH GT-R」は、フロントローの2番手グリッドから今季初優勝に挑む。GT-R、そしてエースドライバーである本山 哲とオートポリスとの相性は抜群。ここまで未勝利の23号車に対するファンの期待は並々ならぬものがあった。
危惧された台風17号は昨夜遅くに九州地方から去ったが、まだ余韻の残る早朝。小雨と深い霧に見舞われ、9時20分からのフリー走行は開始直後に視界不良のため赤旗中断となりそのまま終了となる。
さらにこのため急遽設定された午前11時からの特別フリー走行も、霧が止まずキャンセル。オートポリスは午後の決勝の開催さえ危ぶまれる、不穏な天候につつまれていた。
ところが午後に入ると霧は徐々に晴れ始め、第7戦の決勝は定刻通りに行われることとなる。小雨は変わらず降り続いたため路面はウェットのままだったが、フォーメーションラップ開始直前にほぼ止み、各チームがタイヤ選択に悩む状況に。23号車はインターミディエイトをチョイスし、スタートドライバーの本山を乗せグリッドにつけた。
レースは安全確認のため、セーフティカーランでスタート。3周目にセーフティーカーがコース外に出て事実上のスタートが切られると、本山は猛然とプッシュを開始。トップを走るマシンの背後につけ牽制するやいなや、早くもオーバーテイクを成功させトップに浮上。
その後も速いペースを維持し続け、周回を重ねる毎に2位以下を引き離していった。5周目には約4秒、10周目には約8秒差と、徐々に今季初優勝は近づいていった。
ところが迎える12周目、クラッシュしたマシンが出たためセーフティカーが導入されると、これを皮切りに23号車の雲行きは変化していった。16周目のリスタートでトップを守り、本山は再び2位との差を広げにかかるが、その10周後あたりで急にペースダウン。
27周目、一気に後続2台に逆襲を喰らってしまう。23号車は翌周、早めのピットインを敢行。タイヤを交換し、本山は後半スティントを担当するミハエル・クルムにバトンを渡した。
代わったクルムも序盤は速いペースで追い上げトップ奪回が可能な圏内につけるが、残り15周というところで再びペースダウンに悩まされる。そして51周目にタイヤ交換のため緊急ピットインしなければならなかった時点で優勝の可能性はほぼ消滅。
しかしクルムは、その後もあきらめず更にペースアップして追い上げ、ピットインで8位まで落とした順位を6位にまで戻し、ブリヂストンタイヤ勢としてはトップの6位でチェッカーを受けた。
5ポイントを獲得した23号車だが、期待の初優勝は今回もならず。残るチャンスは最終戦のみとなった。今季のタイトルはこの一戦を制した同じニッサンGT-R勢の1号車が2年連続の獲得を決めた。
昨年の最終戦は、23号車の優勝と1号車のタイトル獲得で大いに盛り上がりを見せた。タイトルが決定した今、ニッサンファンが最終戦で望むものはこれで、真っ赤なエースカラーに塗られた23号車の今季初優勝に絞られている。
●本山 哲のコメント
「マシン自体の調子は良かったですが、微妙に変化していく路面状況とタイヤのパフォーマンスが上手く噛み合わなくて、せっかくのトップを守ることができず非常に残念なレースとなりました。
優勝のチャンスはあと一回になりましたが、チームとマシンは非常にいい状態なので、最終戦のもてぎでもいい戦いができると思います。
今回、ファンシートに来場いただいた方々やファンの皆さんのたくさんの声援が心強かったです。急な予定変更で残念ながらスタンド席には行けませんでしたが、最終戦もてぎでは皆さんの思いに応えられるレースを約束します。
最後のチャンスに向けチーム一丸となって頑張りますので、最終戦も応援よろしくお願いします!」
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