S-GT RD3 セパン戦レポート
【予選】6月9日(土)天候:曇り一時晴れ 路面:ドライ 気温:31℃ 路面温度:40℃(スーパーラップ開始時)
岡山で行われた開幕戦から2ヶ月余り。スーパーGT2012シリーズは、第3戦をマレーシアのセパン・インターナショナルサーキットで迎えた。23号車「MOTUL AUTECH GT-R」はここまで随所で速さを見せながらもベストリザルトは前戦の3位と、決して実力通りの結果を残せてはいない。
GT-Rと相性の良いこのセパンは、今季初優勝を飾るとともにタイトル戦線をリードする大きなチャンスであった。
公式練習が行われたこの日の午前中、空は厚い雲に覆われ、気温は30℃を超えたあたりで留まっていたものの湿度は高く、ドライバーにとってもマシンにとってもタフな1日となることが予想された。
公式練習は10時から12時までの2時間で、最初の1時間40分はGT500とGT300との混走。残り20分がGT300、GT500の順に、それぞれの専有走行にあてられた。23号車を駆る本山哲とミハエル・クルムのコンビは、それぞれ18周と19周を周回し、セットアップを進めた。
今回の予選はスーパーラップ方式だが、去年までのレギュレーションでは1回目に2人のドライバーが予選通過基準タイムをクリアし、2回目の予選でタイムアタックドライバーが走る、つまり求められるのはどちらか一方の速さのみだったところ、今回はそのスタイルが変更。
予選1回目で走ったドライバーが、スーパーラップを走ることができなくなった。したがって2人のドライバーがともにアタックして好タイムをマークしなければ、予選で上位グリッドを手にすることができなくなったのである。当然、予選を控えた公式練習でも、2人のドライバーがともに予選セットを試しておかなければならなかった。
午後3時30分から行われた公式予選1回目、23号車はクルムが出走。コースコンディションが上がってくるセッション後半にアタックを掛ける作戦だったが、アタック開始とともにオイルスモークを吐いてコースサイドにストップするマシンが出てしまい、セッションは赤旗中断。残り4分で再開されることになった。しかしクルムは集中力を途切れさせることなく好走。4番手でスーパーラップ進出を果たした。
これを受けて午後5時過ぎから始まったスーパーラップでは本山が、ベテランらしい中にもアグレッシブさ溢れるドライビングで魅せた。酷暑で知られるセパンだが、この日は思いのほか気温、路面温度ともに上昇していなかった。また決勝を見込んだタイヤ選択もあり、インラップも含め2周ではハード目のタイヤを充分に温めることは出来なかったが、そんな中、本山は猛プッシュ。コーナーではリアをスライドさせるシーンもあったが、それも気合充分の証。そして、結果的に1ポジションアップとなる3番手のタイムをマーク。
決勝ではポールシッターの真後ろからスタートすることになった。この日見せた本山とクルムのドライビングスキル、そして23号車のチームとしての総合力、それらを考え合わせれば表彰台のより高いところを充分狙えるグリッドを獲得した。
●予選コメント
「セパンはシーズンオフのテストで走りましたが、その時に比べると路面が滑りやすかったし、セパンにしては気温、路面温度ともに低く、タイヤも温め難かった。実際、アタックラップに入ったところではまだ、充分に温められていなかったと思います。でも、それを考えれば、まずまずの予選結果。決勝はセパンらしい暑さになるようなので、もう一度セットを見直し、充分に対策してレースに臨もうと思います。マイケルも僕も体力的には自信があるし、GT-Rにはエアコンもついているから、暑くなればなるほど有利。もちろん優勝を狙って頑張りますので、応援よろしくお願いします!」
【決勝】6月10日(日)天候:晴れ時々曇り 路面:ドライ 気温:33℃ 路面温度:49℃(決勝開始時)
公式予選が行われた前日は、湿度は高いものの気温はそれほど上昇しないという、まるでセパンらしからぬコンディションだったが、一夜明けたこの日は朝から強い陽射しが照りつけ気温もぐんぐん上昇。正真正銘のセパン・ウェザーとなった。
3番グリッドという好位置から今季初優勝を狙う23号車「MOTUL AUTECH GT-R」は、通常より長めの時間が設けられた朝のフリー走行で、前日とは一変したコンディションにマシンを合わせこむべく、チーム一丸となり精力的にセットアップ作業を行った。
午後2時55分から決勝のスタート進行が始まり、各車は8分間のウォームアップ走行を行いコースのコンディションとクルマのセッティングを最終確認する。そして一旦ピットに戻った後、再びコースインしホームストレートに整列。
オープニングセレモニーを終えると、いよいよフォーメーションラップがスタートする。今回は隊列が整わなかったためか、ローリングラップに2周を費やし、正式なスタートが切られたのはやや日差しが弱まった午後4時08分となった。
本山哲がスタートドライバーをつとめる23号車は、3番グリッドから順当にスタート。ところがそこから先は、なかなかペースを上げることができなかった。ベテランならではの技を駆使しポジションに踏みとどまろうとするも、1台に先行を許した後、さらに次々と後続車が本山に襲い掛かる。23号車は健闘むなしく、ジワジワとポジションを下げていくことになった。
このとき本山は、過度のアンダーステアでの走行を強いられていた。さらにアンダーステアが原因で、タイヤの磨耗も厳しくなるという悪循環。本山はチームと無線で相談し、作戦変更を決意。本山のスティントを予定より短くして、後半を担当するミハエル・クルムに、ロングラップを委ねた。
22周を走り終えてピットに戻った本山に代わり、23号車は挽回を期しクルムをコースに送り出す。しかしクルムも同様に、アンダーステアに苦しめられることとなる。厳しい状況の中、奮闘を続けたクルムだったが、終盤には他車に接触されてしまうというアクシデントに見舞われ、9位でチェッカー。その後、接触してきたマシンにペナルティが課せられたことで23号車は最終的に8位に繰り上がり、3ポイントを獲得した。
今季ここまで、予選順位を決して下回ることなくチェッカーを受けてきた23号車。第3戦は、思いがけない試練となった。しかし3戦連続で着実にポイントを獲得していることで、タイトル戦線への返り咲きはまだ充分可能。次戦のSUGOラウンドまでの約一カ月半のインターバルのマシン開発が、後半戦の巻き返しのカギを握っている。
●決勝コメント
「走り始めてからすぐに、アンダーステアがきつい状態になってしまい、ペースを上げることができませんでした。タイヤの磨耗も早かったので予定より早めにマイケルに交代することになったのですが、マイケルも同様に苦しかったようです。長いシーズンにはこんなレースも必ずあるので、そこで3ポイントを獲れたことを良しとして、気持ちを切り替えて次戦に臨みたいと思います。インターバルの間にじっくりとマシンを見直して、SUGOでは速い23号車を皆さんにお見せできるよう頑張ります。楽しみにしていてください!」