2012 FIA WORLD ENDURANCE CHAMPIONSHIP RD3 「Le Mans 24Hours Race」 決勝レポート
6月16日(土)~17日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ 気温:25℃ 路面温度:29℃(決勝開始時)
本山哲にとって13年ぶりとなる「ル・マン24時間レース」は、いよいよ決勝の日を迎えた。決勝に先駆け行われた午前9時から45分間のウォームアップは、ウェットコンディションとなったが、セッション終了後から天候は回復傾向を見せ、コース上も徐々に乾いていった。
本山たちがドライブする「デルタウィング・ニッサン」は、このウォームアップではノータイムに終わっている。と言ってもシリアスなトラブルがあったわけではなく、セッション前半はドライバー交代のシミュレーションをメインに行い、ピットアウト、インを繰り返したために計測はなし。
そして後半には、エンジンの電気系に些細なトラブルが発生したため、充分なレースシミュレーションを行うことができなかった。
こうして迎えた決勝、「デルタウィング・ニッサン」のステアリングを最初に握るのはミハエル・クルム。クルムはスタートから安定したペースで周回を重ねるが、約1時間のスティントを2回終えたところでマシンにトラブルが発生し、ポジションを50位前後まで落としてしまう。
そしてマシンのトラブルが解消すると、ここで本山がクルムからステアリングを引き継ぐ。本山は快調なペースで周回を重ね、少しずつ、そして確実にポジションをアップしていった。
スタートから5時間余りを経過したところで、上位グループのマシンのアクシデントによりセーフティカーが入る。45番手辺りまでポジションを上げていた本山の猛プッシュも、ここで小休止となった。そして1時間近くを経過してセーフティカーがコースを離れ、いよいよレースは再開。
本山も仕切りなおしで猛チャージを再開しようとするが、その矢先、不運なアクシデントに巻き込まれてしまう。トップ争いの集団にパスされる際に、その中の1台に跳ね飛ばされてしまったのだ。さらにコースアウト後、ダメージを負いコントロール不能になったマシンは、グラベルベッドで右往左往した挙句にコンクリートウォールに直行。
レース序盤にしてこのル・マン・チャレンジは終了してしまうのか・・・・
コクピットの中でピットからの無線の指示を受ける本山は、マシンを降り立ちカウルを開けてマシンをチェック。無線で指示を受けながら何とかピットまで戻ろうと自ら修復を試みた。ダメージは思っていた以上に酷く、エンジニア、チーフメカニックがコースサイドに止まったデルタウィングのそばに集まり1時間近くに及ぶ懸命の作業を行う。
この場面は国際映像で放映されこの小さな黒いマシンに世界中のレースファンが注目した。しかし駆動系の修復には何とか成功したもののステアリング系統は完全に壊れた状態で修復不可能と判断。
周りに集まった多くの観客が最後まで諦めない姿に賞賛を送りつつもここでレースを終えることになった。
決勝は24時間レースの3分の1を走り終えただけでリタイア……13年ぶりの夢の舞台は、結果から見れば散々なものとなってしまった。それでも本山は、ニッサンやミシュラン、そしてチームのスタッフと一丸になって、新しいテーマにチャレンジすることの魅力を満喫した。それは見ているファンにも伝わったに違いない。
●本山哲のコメント
「ペースが良くなってきてレースが再開された直後のアクシデントで、これからって時だったので、本当に悔しいです。
マシンを停めた後も何とかピットに戻れないかと色々やってみましたが、マシンのダメージは思っていた以上で無理でした。悔しい結果に終わったけど、今回のプロジェクトは意味あること。
チャレンジングでモチベーションも高く、やっていて楽しかった。今後はどうなるか分かりませんが、まあ、その楽しみはとっておくことにします。
このレースでは忘れられない思い出ができました。リタイヤを決めるまでデルタウイングのそばで復活を願ってくれた多くのファンの皆さん。モータースポーツを心の底から楽しんでくれているんだと。
こんな素晴らしい人たちの前で今度は最後まで走り切りたいと思います!
日本に帰ってからはスーパーGTに気持ちを切り替えます。7月のSUGOでは今度こそ優勝できるよう頑張ります。応援よろしくお願いします!
最後になりましたが、このプロジェクトに携わった、すべての関係者、ファンの皆さん、主催者に心よりお礼を申し上げます。」